エアロバティックスについて

　日本ではエアロバティックス(アエロバティックス)という競技は馴染みが薄いですが、欧米では多くの人に親しまれています。エアロバティックスとは飛行機の曲技飛行のことです。日本では多くの方が曲技飛行とは航空ショーなどで行われるアクロバット飛行をイメージされると思います。ですが、エアロバティックスと航空ショー等で行われるアクロバット飛行では、それぞれ違った要素を持っています。航空ショーで行われるアクロバット飛行は、サーカスやスタント等と同様に観客を楽しませるために行われます。それに対して、エアロバティックスはルールに従って行われる競技であり、選手達が順位を競い合います。もちろんエアロバティックスにも航空ショーのような華やかさなどもあるので、競技を観戦する観客は航空ショーを見るように楽しむことができます。エアロバティックスはフィギュアスケートに非常によく似た競技なので『大空のフィギュアスケート』とよく言われます。そして、エアロバティックスはIOC(国際オリンピック委員会)公認のスポーツです。

　エアロバティックスの競技会について

　エアロバティックスで最高峰の競技会は、2年に1度開催される『アンリミテッドクラスの世界エアロバティックス選手権』です。この世界選手権は、1960年にチェコ・スロバキアで第1回大会が開催されました。それ以来20回以上開催されています。この世界選手権は、多いときには20カ国以上の国が参加し、80人以上の選手が出場しますが、日本人は今までに3人しか出場していません。
　この世界選手権では、音楽に合わせて演技を行うフリースタイル種目が行われることもあります（実際の演技の映像がトップページのＭｏｖｉｅでご覧になれます。）。世界選手権には、このフリースタイル種目の他にクラシックスタイルという種目がありますが、フリースタイル種目と異なり、音楽は使用しません。また、フリースタイル種目は選手が演技内容を自由に決められますが、クラシックスタイル種目では、演技内容が事前に決められているため（一部、選手が決められる部分もありますが）全選手が同じ演技を行います。クラシックスタイル種目は、フィギュアスケートのコンパルソリー種目のようなものです（1990年までフィギュアスケート競技には、音楽を使用せず、全選手が全く同じ演技を行うコンパルソリーという種目がありました。元々フィギュアスケート競技は、このコンパルソリー種目だけで競われていました。音楽が使用されるようになってから、まだ50年程しか経っていません。）。
　フリースタイル種目は、曲との調和や曲の表現力なども採点され、技術だけでは高得点を得ることができません。フリースタイル種目では、技術だけでなく、選曲のセンスや曲の表現力などの芸術的な能力も求められます。また、競技を観戦する観客にとっても音楽とスモークを使用するので、クラシックスタイル種目よりも楽しむことができます。特にクラシックスタイル種目は、全選手が全く同じ演技を行うので、一般の方には勝敗が判りにくいです。
　このフリースタイル種目だけの大会が、日本でも栃木県のサーキット『ツインリンクもてぎ』において『アエロバティックス日本グランプリ』という大会名で2008年まで開催されていました。
　また、その他にも、エアロバティックスの世界選手権等の国際大会で上位入賞を果たした選手のみが出場できる『レッドブル・エアレース(Red Bull Air Race)』という競技があります。この『レッドブル・エアレース』は決められたエアロバティックスの技を行いながら、風船で造られたパイロンを規定の飛行姿勢で通過し、そのタイムで勝敗を決定します。エアロバティックスの技が不正確であったり、パイロンへの接触やパイロン通過時の姿勢が規定通りでないとペナルティとしてタイムが加算されます。ちょうどスキーのモーグルとスラロームを合わせたような競技です。このレッドブル・エアレースは世界中を転戦し、年間6～7戦でその年のチャンピオンを競い合います。このレッドブル・エアレースはとても人気があり、2005年のオーストリア大会では、スポーツイベントとしては歴代2位の観客動員数を記録しました。そして、2008年と2009年には、レッドブル・エアレース全戦がフジテレビ系列の地上波でテレビ放映されました。現在、このレッドブル・エアレースは休止中ですが、数年後に再開が予定されています。佐藤洋一は、世界選手権とレッドブル・エアレースへの出場を目指しています。